まくら

神奈川近代文学館で、中野重治の特別展が開催されていました。
その企画の中に、1979年に中野が亡くなったときの葬儀の様子を記録した映画の上映がありました。
その映画は、最初に神山茂夫の葬儀(か、しのぶ会のたぐいかはよく知らないのですが)であいさつする中野の映像がくみこまれ、かれの肉声も聞けます。
そこで、中野は『戦旗』初代編集長だった佐藤武夫の思い出を語ります。かれが、二つの団体が合同して成立したナップのなかで、誠実に編集の仕事をしたことを回想するものです。そこと神山とどうつながるのかなと思って聴いていると、中野の話は、〈こういう過去の事実を書き残してほしい、歴史を歪曲するものへの対抗だから〉という方向につなげます。そして、映像は神山が編集した戦後の日本共産党の文献についての本をアップにして映しました。〈歴史を歪曲〉とは、そっち方向のはなしかと思って、興ざめになりました。
映像そのものは、中野の葬儀のときの弔辞(山本健吉、国分一太郎、石堂清倫、尾崎一雄本多秋五桑原武夫臼井吉見宇野重吉=順番はこのとおりではなかったと思います)と、佐多稲子原泉のあいさつがそれぞれ肉声で聴くことができましたし、石川淳が弔問していたこともわかり、それは興味深いものでしたが。