もりだくさん

福山瑛子さんの書き下ろし、『キューバにかかる虹』(柏艪舎)です。出版社は札幌にあります。
1977年に、翌年にひらかれる〈世界青年学生祭典〉の準備状況を、各国のジャーナリストたちが取材に訪れるのですが、その中の一員として参加した女性記者(作者の投影でしょう)を主人公にして、当時のキューバの実態と、ジャーナリストたちとの交流を描いた作品です。
このころは、まだ東西対立の時代ですので、アメリカやプエルトリコからは亡命者が一行にくわわっていたとか、そうしたなまぐさい時代でもありました。主人公たちはキューバのあちらこちらを観覧しながら、革命後20年のその国をながめるのです。
作者は小説として書こうとしているのでしょうが、実情を紹介することが中心になっていて、いろいろな場面があるのですが、そこを貫くまとまりという点には、もう少し工夫が必要なのではないかという感じがします。