お国ぶり

アルベルト・モラヴィア『いやいやながらの"参加"』(大久保昭男訳、三省堂1984年、原本は1980年)です。
モラヴィアの社会問題を考えたエッセイを集成したものです。彼は、たとえば『ウニタ』には書かない、なぜならどの政党にも属さないからだ、と明言して、社会問題に関して発言します。日本を訪問したときも、日本の経済成長が集団主義的な社会のありようと関連してるのだと分析します。そうした分析の観点は、ある点では1950年代の加藤周一をおもわせるものがあります。
もちろん、イタリアと日本の戦後の歩みはちがうのですが、そこを考慮に入れても、戦後の西側世界での、ひとつの知識人のありかたがみえます。ただ、1970年代あたりに、イタリアでテロが行われていたときには、それに対してのいらだちは、その時代を共有していないとむずかしいかもしれません。
そのモラヴィア、最晩年は左翼ブロックから欧州議会に立候補、当選したのだそうです。そういう生涯もあるのですね。