掛け算だから

村上陽一郎さんの『人間にとって科学とは何か』(新潮選書、2010年)です。
このご時勢ですから、どうしても、科学者の社会的責任とか、リスクの回避の問題とかに、特化した読み方をしてしまうところですが、安全に関しての著者の考えには、なるほどと思うところがあります。
村上さんは、『リスクの認知』『空間的距離』『時間的距離』『心理的距離』が逆比例で安全に関する認識が生まれるのだといいます。〈逆比例〉ですから、それは掛け算の世界になります。
となれば、〈安全神話〉なるものの上にのっていては、最初の〈認知〉の値が0ということですから、そのあとをいくら積み重ねても、0にしかなりません。
こわいはなしですよね。