復元

井上章一さんの『伊勢神宮』(講談社、2009年)です。
桂離宮法隆寺をうけた、三部作ともいえる、日本の古典建築をめぐる、解釈史ともいうべきものです。ですから、今回のものも、伊勢神宮そのものについての話はあまりありません。神宮建築を、日本の伝統の中にどのように位置づけるのかを、過去から現代までの言説の中にさぐります。ですから、神宮の歴史に関して知りたい人には関係のないものかもしれません。
その中で、最近の動向として、柱跡のたくさんある「建物」を、「神殿」や「祭祀施設」として考えたがる傾向があるらしいのです。もともと日本列島では、神様のやどるところを、自然物(いい例がやまとの大神神社で、三輪山が祭神で本殿がありません)として信仰してきたにもかかわらず、そうした時代に大きな「神殿」があちこちにあったのだと考えようという状態だというのです。
ですから、遺跡を「復元」する場合でも、なにやら神社風の建物にしがちだというのです。それが本当に当時存在していたのか、はっきりと論証はできないのに、そういうようにつくってしまう心象が生まれているというのです。
見るほうも、気をつけなければいけませんね。