戒める

新田一郎さんの『相撲の歴史』(講談社学術文庫、2010年、親本は1994年)です。
ちょうどこの時期に、八百長問題で、公益法人としての資格を認めるかどうかというところまできているなかで、〈大相撲=現在の日本相撲協会〉にとどまらず、広く相撲そのものを考察したこの本は、今後のあり方を考える上で、けっこう重要な視点を持っているようにみえます。
考えてみれば、歌舞伎は松竹がもっていて、ほかにも前進座もありますから、相撲協会が〈公益法人〉として認められなくても、会社組織として相撲興行を行って、巡業のように全国各地を回ることは可能なわけです。もちろん、その収益でみんなが生きてゆかなくてはなりませんから、給与のあり方など再検討しなければならない(大幅カットはやむをえないか)でしょうが。明治大正期には、貴顕や実業家の後援はあったものの、基本的にはそうやってきたわけです(だからストライキもしばしば起こりましたし大阪の相撲協会は業績不振で東京に吸収されました)。すもうとりの養成には、あれこれあろうとも300年の経験の蓄積があるのですし、それ以上の、〈相撲興行〉の歴史の重みを考えると、かりに日本相撲協会が財団法人とならなくとも、大相撲が消えることはないと思うのです。そのためには、システムの見直しは必要でしょうが、そうしたことも考え、安易な結論をだすべきではないでしょう。