期待はする

増田勝さんの『冬の景色は』(本の泉社)です。
作者の妻(藤林和子)の死を題材にした作品集で、ガンのために死んでゆく妻と、遺されるものたちの生き方を描いています。
昔だったら、文学の題材として、〈結核〉が死につながる病として多く出てきたのですが、いまはやはりガンがそうした病気として出てくるようです。
『民主文学』誌に掲載されたときには、堀辰雄の『風立ちぬ』のように、死でとどめずに遺されたものの生活と再生まで書ききってほしいとここでも書いたのですが、本では、以前に作者が書いた、遺されたものの苦しみとそこからの立ち上がりを描いた先行する短編を加え(登場人物の名前がすべて一致しているわけではありませんが)、形としては、整ったものになっています。
文学と社会の変革のために全力をつくしたお二人の人生を、きちんと書き留めておくことが、時代の証言にもなりえることでしょう。作者が、どこまでみずからの作品を進めるのか、見ていきたいと思います。