楽観

ジョレス・メドヴェージェフ『ソ連における科学と政治』(熊井譲治訳、みすず書房、1980年、原著は1978年)です。
著者は、ソ連から追放された科学者ですが、ソルジェニーツィンのように社会主義の思想に対して懐疑的な人ではないようで、この本でも、ソ連の科学自身に内在する発展する要因をみてとっています。
たしかに、ロシア革命から約10年くらいの時期とか、スターリン批判のあとの時期とかのように、科学がわりと自由に発展した時期もあるので、著者の意見もわからないではありません。事実、現在でも、国際宇宙ステーションや、宇宙からの帰還の技術に関しては、ロシアなくしては成り立たないのですから、道理はあります。
しかし、一方では、この本が出てから約10年後におきた、チェルノブイリの一件を考えると、そんなに楽観視はできなかったのではないかとも思えます。それだけ、未来を予測するのは難しいのでしょう。