年齢

中上健次の『枯木灘』(河出書房新社、1977年)です。
ぐちゃぐちゃした人間関係に閉口しながらも、そのしがらみの中で生きようとしておきる悲劇は、それとして感じることができるのですが、主人公の秋幸が26歳で、周囲に対して十分なおとなとして振る舞おうとしているのが、この間のこととあわせて感じられます。マツダの車突入が40歳を過ぎた年齢の人物ですが、そこにはおとなという感覚が鈍っているような感じもするのです。それだけ、この30年間に、社会が成熟を阻んでいるのかもしれないとも考えてしまうのです。この前、古井由吉さんの『人生の色気』にふれたとき、古井さんが中上健次は若手扱いされてかわいそうだったと感じられる発言をしていたことに注目しましたが、たしかに、『枯木灘』を若者扱いされたら、それは奇妙なことでしょう。