片鐙

前に書いたかもしれませんが、幸田露伴の「骨董」というエッセイがあります。その中に、マクラとして振られている話ですが、
江戸時代に、ある古物商の修業中の若者が、京都で、いい鐙をみつけました。ところが、片方しかありません。そのためか、値段も意外と安いのです。その若者、今度は大坂で、その鐙の対をみつけました。値段を聞くと、これも予想外に安いので、これを手に入れて、京都のものと組み合わせたら、いい商売になると考え、若者はそれを買ったのです。しめたと思って、親方にいうと、「鐙の左右は確認したか」といわれて、自分がまんまとひっかかったことを悟った。
というのです。
実は、通勤時の乗換駅の、西と東に古本屋があるのです。そこで、社会思想社の現代教養文庫の、江戸時代の黄表紙翻刻、全6冊(1980年−1985年)がバラバラにおいてあったのを、かき集めることができたので、この話を思い出したのです。