バランスをとる

中公文庫で、昨年から『世界の歴史』のシリーズが出ています。1990年代半ばからハードカバーで刊行されたものを文庫化して、最新のあとがきをつけるというのが、今回の基本のようです。いちおう、高校で世界史を習ったくらいの人を読者として想定しているような感じです。まあ、未履修のごたごたがなければ、たてまえからいえば、世界史は全員必修ですから。

さて、今回はその中の『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』(親本は1999年)という巻です。フランス・ドイツ・イタリア・ロシア・イギリスの19世紀のことが書かれています。この前、ラファルグの本を紹介しましたが、不破哲三さんの本など読むと、『反デューリング論』や『ゴータ綱領批判』などの説明を通して、その時代のドイツのことはなんとなく知ったような感覚になるのですが、それでも、第三共和制の時代のフランスは、けっこう穴のようだと実感しました。何せ、1880年代まで、フランスの教育はカトリックによって担われていたというのです。ラファルグのキリスト教へのパロディのような対応も、道理があったのですね。また、『失われた時を求めて』の中で、ドレフュス事件に関しての議論が激しくたたかわされていたのも、それなりの理由があったのだと思い至りました。