暮らす場所

絲山秋子さんの『北緯14度』(講談社、2008年)です。
著者の、西アフリカ、セネガルに行ったときの記録的な作品です。
こうした作品では、どうしても主人公は旅行者でしかありません。その土地でお金を稼いでいるのではなく、別の場所で仕事をして、その結果としてその土地を訪れるのです。ですから、そこでの人間関係が、どう美しく作られても、そこには、〈そこで稼ぐ人〉と、〈そこで消費する人〉との関係になってしまいます。それを覚悟して読めば、著者のセネガル経験は、彼女の人生に大きなものをもたらしたようです。
それにしても、ここで描かれる、日本人社会のみじめさは、目に余ります。大使夫人は、現地語の〈ありがとう〉にあたることばも覚えていないのだとか。そうした人たちの世界観では、もしかしたらアフリカ勤務は〈島流し〉的な感覚なのでしょうか。そうだとしたら、私たちは日本人として恥じなければいけません。