東と西

現代日本文学論争史』は長いので、上巻と中巻の間に、はしやすめのような感じで、松本徹さんの『夢幻往来』(人文書院、1987年)を読みました。松本さんは『文学界』の同人雑誌評を長くやっている方です。
大阪育ちの松本さんが、関西の古典文学にまつわる土地を探訪したエッセイです。謡曲浄瑠璃の舞台となった土地が多いのです。
こういうテーマとなると、やはり関西育ちの人にはかなわないという感じがします。日本の古典文学が、関西中心ではじまったことは言うまでもないことで、そうした伝統をどう考えるのかは、これからの日本文学をみるときに、古典の遺産をどう生かすのかにつながってくるのでしょう。大和桜井出身の保田與重郎が、古典をどのように扱っていったのかという、反面教師を、私たちはもっているのですから。