裏時評

今日の『しんぶん赤旗』に時評が載りましたが、そこで扱わなかった作品のいくつかについて、少しコメントしていこうかと思います。
『文藝』の、柴崎友香の「また会う日まで」ですが、この作者は、前に大学生を主人公にした作品を読んだことがあって、『民主文学』の時評で言及した記憶があります。
今回の作品は、26歳の主人公の女性が、東京に出てきて、かつての高校の同級生のところを訪れるという話です。もちろん、彼にはもうつきあっている人もいるし、主人公もそれを意外には思いません。その彼にストーカーまがいに接近して世話を焼く、高校時代の後輩の女性(大学院生です)もいるのですが、彼女にも実は彼氏がいるというのです。
この人の作品は、そうした修羅場になりそうにみえるけれども実は決してそうはならないという状況を描くのが好きなようです。それはそれでもかまわないのかもしれませんが、それならば、この長さは長すぎます。もっと絞って、その主人公と彼とその後輩との3人の関係に重点をおけば、もっと鋭い作品になるのではないかと思います。この人の課題は、きっとそこにあるのでしょう。