世代

絲屋寿雄『自由民権の先駆者』(大月書店、1981年)です。
大逆事件で死刑にされた奥宮健之の生涯を追ったものです。奥宮は、1857年生まれなので、幸徳秋水より14歳年上ということになります。ですから、キャリアも長く、国会開設が決まった直後から自由党で活動し、人力車夫を組織して〈車会党〉をつくろうという運動も起こしました。これは、すぐに彼が放蕩に出かけて、途中で警察とトラブルをおこすという偶発的な事件のために頓挫してしまいます。
そのあと、過激行動のかどで獄中にはいることも長く、相当な経歴の持ち主だったといえそうです。
考えてみれば、国会開設決定から大逆事件まで30年の年月が経過しているわけですから、当時のことですから、今よりも世代交代の意識は強かったことでしょう。
逆に、大逆事件から普通選挙までは17年しか経っていないのですが、小林多喜二の「東倶知安行」に出てくる幸徳秋水と一緒に活動した老人と、主人公との差は、実際よりも大きく見えます。そこに、当時の社会変革の運動の進みゆきの複雑さもあるのでしょう。