高揚

『文学・芸術の繁栄のために』(駿台社、1954年)です。
1953年に中国で開かれた、「中国文学・芸術工作者第2回代表大会」なるものの報告や発言で、活字になったものを日本で編集したものだそうです。
中華人民共和国ができて4年というところなので、みんな「新しい人間像」をどう描くかというところで、〈社会主義リアリズム〉なるものを引き合いに出しながら討論しているというところでしょうか。郭沫若とか、周揚とか、茅盾とか、張天翼とかいう、日本でもおなじみの名前が登場します。
こうした論集というもの、具体的な作品が出てこないとおもしろくないので、その点ではどんなものかとも思うのですが、引き合いに出される古典が水滸伝紅楼夢というのが、やはり中国らしいとはいえるのでしょう。
新政権発足から5年くらいで、世の中が根本的に変ったというのも、今にして思えばいかがなものかとも思うのですが、そういう昂ぶりも含めて、検証すべきことは多いようです。楊朔の「三千里江山」(日本語訳は『長白山脈を越えて』だったかな)の話題がよくでてくるのも、1953年という時期なら当然なのでしょうが、そういう具体的な作品をとっかかりにするということは、可能かもしれません。