利用のしかた

森浩一さんの『日本の深層文化』(ちくま新書)です。
アワ・シカ・イノシシ・クジラと、日本人の身近にありながら、実はよく知られていないものについて考えようという試みのものです。
とくに、シカやイノシシを、狩猟の対象で、食肉にしたという単純な理解では片づかないことを述べているところが印象に残ります。シカは骨角器としての利用、イノシシはいけにえ用として飼育されていた可能性をみるところは、なるほどなとおもうところもあります。岩戸山古墳の別区の裁判の場で、イノシシが贓物とされていることなど、知ってはいたのですが、こうして連結されると、新しくみえるものです。
クジラも、日本人は身も油も骨も皮も使っていることはよく知られていますが、それがけっこう古い時代にさかのぼるというのも、おもしろいものです。
やや話題が散漫になっていて、読みづらい部分もありますが、過去を考えるとっかかりとしては、おもしろいものでしょう。