悪役

水滸後伝』(平凡社東洋文庫、鳥居久靖訳、全3冊、1966年)です。
17世紀前半に書かれたもので、水滸伝の108人のなかで生き残った面々が、いろいろなめぐりあわせのすえ、海外に新天地を求めるという物語です。そのプロセスは、よく練られていますし、場合によっては亡くなった英雄の子どもを登場させて世代交代の趣も出したりと、作者はあれこれ工夫をこらしています。
海外に出たものたちは、ある国に到着し、そこの国王の婿に花栄の子どもがなるのですが、国王の座をねらう悪宰相が登場、道士を使って国王を死なせ、みずからがとってかわろうとするところで水滸の英雄たちがそれを阻止するという流れなのですが、そのなかで、悪宰相側は日本に援助を要請、関白率いる軍勢が攻めてきます。結局は公孫勝の術によって、みんな凍死してしまうのですが、それだけ当時の人たちにとって、〈関白の日本〉は恐怖の記憶を呼び起こすものだったのでしょう。
この当時の日本を国際的な文脈におくのは、けっこうむずかしいことなのかもしれません。