つぶしたのはだれ

魚柄仁之助さんの『食べ方上手だった日本人』(岩波現代文庫、2015年、親本は2008年)です。
1930年代の料理に関する文献をさぐり、当時の食生活のなかの知恵や工夫を考えるものです。当時の食品保存法や、都会におけるガスの普及が料理のあり方を変えていった姿などを追いかけます。
こうした本に対して、「だから戦前は暗い時代なんかではなかった」というふうな論を立てる人もいるでしょう。それが、〈戦前への回帰=戦後レジームからの転換〉を希求する人たちには耳にこころよいかもしれません。
けれども、それならば、なぜそうした世界が崩れていったのでしょう。崩していった勢力があるはずです。そこに目をふさいではいけないのではないでしょうか。