虚におく

あまちゃん」のこの2日間について、少し。
地震が起きて、アキたちのコンサートは中止になり、映画も公開打ち切り、そういうなかで、鉄道は少しずつ運転を再開するという流れになります。
もちろん、かつての朝ドラが、戦争の時代を乗り越える主人公たちを多く描き(最近でも「おひさま」「カーネーション」とかありましたし)、少し前には、大阪制作のものでは阪神淡路の地震をストーリーの展開に使うものがあったように思います。
今回は、地震からまだ2年半という近接した時期ですから、あの日に何が起きたのかは、観る側は当然知っていて、自分の記憶と照らし合わせることでしょう。そこを、ストーリーの流れとして、無理なく展開させるのはけっこう難しかっただろうと思います。
実際、トンネルの中に停止したのは、三陸鉄道南リアス線の列車ですから、ドラマの中の「北三陸鉄道」ではないわけです。そこで、この「北三陸」という設定が生きてくるわけです。
というのも、朝ドラの場合、けっこう具体的な作品の舞台が設定されていることが多いのです。「カーネーション」は岸和田ですし、「つばさ」は川越でした。「梅ちゃん先生」も、蒲田という地名が出てきます。あげればきりがありません。
けれども、「あまちゃん」の〈北三陸市〉は、実在する久慈市ではありません。そこに、作者の配慮を感じないわけにはいきません。それは、報道をみる登場人物を出し、テレビの画像に直接の映像を流さない点や、アニメーションで新幹線の運転再開を伝えるところにもつながってくるのでしょう。虚をつかいながら〈実〉を描くというこうした方法は、考える余地があるように思えます。