仕事を選ぶ

映画『風立ちぬ』から少し。
主人公の二郎は、飛行機乗りにはなれません。最初の夢の中で、近眼の自分には無理だという趣旨のことをいっています。けれども、当時の日本では、飛行機に関する需要は軍事しかありませんから、二郎自身が空を飛ぶ場面は、赤城か加賀かの空母を訪れるときに、飛行機で着艦する場面しかでてきません。自分の仕事の成果を、自分の身体で実感できないという立場に、かれはおかれています。「機関銃がなければもっと機体を軽くできる」というかれの発言は、けっこう作者の本音なのかもしれません。そういう仕事でなければ、自己実現ができないという、取りつかれた人を描くところに、作者の意図はあったといえるのでしょう。それも、人間の一面ではありますから。

ところで、最後のほうの、菜穂子が療養所に戻る場面で、黒川さんの奥さんたちがなにやら押しずしめいたものをつくっているのですが、あれは何かの行事食なのでしょうか、どなたかご教示願えればと思います。