自力で

中野重治書簡集』(平凡社)です。
中野の生涯を考えると、もっと手紙はあったでしょうが、とりあえず、夫人の原泉さんが呼びかけて集まった1000通あまりの中から選ばれたものです。
選ばなかった手紙も、宛名と日付ぐらいは記録に残してほしかったと以前書きましたが、それはもうしかたのないことでしょう。
今回、一切注をつけなかったのは、編者(竹内栄美子、松下裕の両人)の見識だと思います。いろいろと問い合わせの答えも、本来は問いがあってのものでしょうし、かかれたことにも、いろいろと言いたい人もいるのでしょうが、必要ならば自分で調べればいいじゃないかと、姿勢をはっきりしているのは、いいことだと思います。
竹内さんには、以前平凡社新書中野重治について書かれたときに、一方的だとここで書きましたが、今回はそういうことはありません。今後のいろいろな検討材料になるでしょう。
たとえば、1961年の『意見書』を、外に出すなと、中野が蔵原惟人と相談して起草者に訴えたのに、かれらはそれを『外』に出したわけですから、信頼をふみにじったのは誰かということでも、新しい展開がなければいけません。