わくの中

十五年戦争満鉄調査部』(石堂清倫、野々村一雄、野間清、小林庄一の座談、原書房、1986年)です。
1985年に行われた座談の記録だそうですが、満鉄調査部に在籍した直接の証言ですので、当時の状況を知る材料になります。
基本的には、満鉄という会社が、日本の支配の道具であったなかで、調査部が何ができたのかということなのでしょう。外から見れば〈自由〉に見える組織でも、内実はやはり組織でしかないということでしょうか。
そうした〈自由〉に若干の期待をして満鉄にはいった、この中のひとりのかたが、宮本百合子の「杉垣」にふれて、あの作品では「満洲には行くまい」と考える人物が登場するが、当時そうした認識を持っていた人がいたにもかかわらず、自分が満鉄に入ったということは、ある種の「責任」があると述べています。支配の側にいつのまにか身を置いて、それでも「身は売っても芸は売らぬ」とうそぶけるひとがどのくらいいるのか。それもむずかしいところでしょう。