校訂

『図説 宮澤賢治』(ちくま学芸文庫、2011年、親本は1983年)です。
賢治の全集の筑摩らしく、原稿や手帳の写真など、いろいろな資料をつかい、文学アルバム的に仕上げようとしています。
賢治の生涯を追うのには、けっこう役に立つものでしょう。
ところで、手帳に書かれた「雨ニモ負ケズ」にはじまる有名な文言ですが、そのなかに、「ヒドリ」と翻刻もできる部分があって、最近も問題になっていました。もちろん、「サムサノナツ」と対応する文言ですから、今までの活字化でおこなわれた、「日照り」のつもりで書いたのだろうという解釈が妥当なものであることは当然でしょう。生の記述が優先されるべきはもちろんですが、どうみてもおかしいものは、根拠を明らかにして校訂すべきものです。
校閲という仕事の意義も、そこにあります。勘違いも時代のコードだという意見もあるでしょうが、(「柳条溝事件」などはその典型かもしれません)かきまちがいから誤植も含めて、いろいろな場合がありえることは、おさえなければなりません。