優越

「コレクション戦争と文学」のシリーズ、『満洲の光と影』(集英社)です。
五族協和とかいいながら、実際は日本人がほかの民族を支配するのが当然という、〈満洲国〉のありようを描いた作品が収められています。最初が、朝鮮から流れてきた人びとが、現地の中国人とトラブルをおこす、伊藤永之介の「万宝山」からはじまっているのも、編者の見識をうかがわせる編集になっています。
最近、マンガのなかで、石原莞爾は先見の明があっただの、甘粕はけっこういい人だっただのというような、〈満洲国〉にもいいところはあったのだ的なものがちらほらあるのですが、この本の作品をみれば、実態が何だったのかもよくわかるのではないでしょうか。時代の証言者としての文学の意味も、あるように思えます。