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小山文雄『明治の異才 福地桜痴』(中公新書1984年)です。
福地桜痴というと、どうしても鷗外の『雁』に出てくる、粋人の先生とか、小松左京の「紙か髪か」の導入部に登場する芸妓のために懐中時計のふたをつぶしてしまった話だとか、そんな印象が最初に来るのですし、せいぜい立憲帝政党をつくって、自由民権時代に一石を投じたというレベルのことしか記憶になかったのですが、幕臣時代から、新聞経営者としての手腕など、目配りをきかせて福地桜痴の生涯を追っています。明治14年の政変といわれたときに、彼が時流に乗りかけてしくじったところなど、人の運命の転変も感じさせます。そうした、先入観にしばられない見方は大事なのでしょう。