めぐりあわせ

大岡昇平『わが美的洗脳』(講談社文芸文庫、2009年)です。
著者の音楽・美術・演劇・映画についてのエッセイを集めたものです。こうしてみると、この人はもともと中原中也小林秀雄との関係が深かったのだということが、あらためてわかるような気がします。もしも戦前に文学者としてそれなりに名をあげていたら、そうでなかったとしても、戦争末期に召集をうけてフィリピンに連れていかれなかったならば、いま大岡昇平という名前からくる印象とは相当違った作家が登場していたのではないかとも思えます。