発展段階

田中英道さんの『日本美術全史』(講談社学術文庫、2012年、親本は1995年)です。
日本の美術を、政治の時代区分ではなく、〈アルカイスム〉や〈マニエリスム〉〈バロック〉のような、様式区分を使って叙述します。それによって、西洋で使われている様式が、日本でも適用できる普遍的なものであることも示されます。
そうなると、人間社会の発展とは、普遍的な段階をへるものだということになるのでしょう。もちろん、周囲からの影響を受けて、段階が歪むことは当然あるわけですが、日本列島の大陸からの距離が、段階を追った自発的な発展をもたらしたともいえるのでしょう。
それは、美術の分野に限らないのではないでしょうか。社会の生産様式も、似たようなことがあるのではないかと思います。著者は、そうした発想をたぶん拒絶するのではないかと思いますが。