謎は解けたか

松本清張砂の器』(光文社、1961年)です。
昔読んでストーリーは知っているので、時代を感じさせる部分がどのくらいあるのかと思っていたのですが、1960年前後という、戦争の混乱から脱却しようとする時期のものという感じはありました。細かく読んでいくと、登場人物のなかで、京都の高校を中退した人物がいるのですが、その時期が、最初は1948年と明記されているのが、刑事の聞きこみのときには戦時中になっているような、キズかなと思うようなところもなくはないです(もちろん、後の版本では微妙な訂正があるのかもしれませんが)。
新聞連載ということで、これもひょっとしたら作者が勘違いをしたのかもしれませんが、和賀と佐知子とが、和賀の家から田所代議士に会いに行く場面で、和賀の車に乗っていったのに、平然と和賀に水割りを飲ませ、そのあと二人でいった赤坂のクラブからはタクシーで帰宅するように読める場面があったので、いくら当時酒気帯びに対して寛容であったとはいえ、やりすぎではないかとおもいます。
そういう意味では、すべての謎が明らかにされているとはいえないような感じもする作品ですね。そこをどう自分の中で解釈するかということも、問われているのかもしれません。