見るべきものは

岩波文庫の、『芥川龍之介書簡集』(2009年)です。
芥川の手紙の代表的なものが収められているのですが、1921年、芥川は中国に出かけます。そのとき、出発前の送別会で、里見とん(文字化けするのでかなで書きます)が、こんなことを言ったのだそうです。「支那人は昔偉かった。その偉い支那人が今急に偉くなくなると云う事はどうしても考えられぬ。支那へ行ったら昔の支那の偉大ばかり見ずに今の支那の偉大もさがして来給え」
芥川が中国で見てきたものは、関口安義さんがいろいろと書いてから、注目されるようになりましたが、このように、中国の現状をきちんと見ていた人も、ちゃんといたことも知らなくてはいけないのでしょう。
里見とんの長編、「多情仏心」とか、「安城家の兄弟」とかは、あまりおもしろくはなかったのですが、こういう側面もあったのですね。