季節の移り

近藤瑞枝さんの『春のあらし』(光陽出版社)です。
近藤さんは、長く青梅の市会議員を勤められた方で、議員を引退したあと、小説を書き始めたのです。『民主文学』や、民主主義文学会の多摩東支部の雑誌『欅』に発表したものを中心にまとめた作品集です。
学校の卒業式での〈国旗国歌〉の強要がおこなわれたことに題材を求めた作品、議会の中に残るボス支配の実態を描いた作品、作者の青春期に素材をとったであろう、勤労動員の経験を書いた作品などが収録されています。真実を追求し、正しいと信ずることを貫くことのむずかしさが、そこには現れています。もちろん、だからこそ人は真実を守り、尊厳をまもるために行動せざるにはおれないのだという、作者のこころが表現されているといってよいでしょう。
作品のタイトルには、季節を表す言葉がちりばめられています。そこに、自然の移りゆきと人間の営みとの関連性をみようとする作者の意図もあるのでしょう。