底に流れる

『近代社会主義文学集』(角川書店『日本近代文学大系』内、1971年)です。
このシリーズは、近代文学に注釈をつけるという、なかなかおもしろい取り組みをしたもので、いまは明治や大正時代の作品には、文庫本では注がつくものが多くなっている先駆にあたるものでしょう。
この巻は、いわゆる〈大正労働文学〉といわれる一連の作品と、その周縁にあたるもので構成されていて、荒畑寒村だとか、宮島資夫の「坑夫」だとか、大逆事件から構想された尾崎士郎のものだとか、今ではなかなか読めないものもはいっています。
こうした作品には、明治時代の社会運動の流れが反映していて、足尾銅山の争議がかかわっていたり、小作人の地主への反抗が描かれたりと、その点も興味深いものがあります。
明治150年がさわがれていますが、こうした作品が簡単に読めるようであってほしいものですね。