プライド

佐々木一夫『青い処女地』(新日本出版社、1981年)です。
作者は鳥取県で農民運動にたずさわりながら小説を書いていた方で、この作品には作者の経験が投影されているように思えます。
時は1930年、主人公の家は自作農だったのですが、親戚の保証人になってしまったために、土地を失い、小作になります。現金収入を得る手段としての養蚕も、繭の買い付け価格が暴落してしまいます。そうしたなかで、自分の未来に確信のもてない主人公は、農本主義にひかれたり、社会主義の本をひそかに読んだりします。その中で、自作農だったときの気持ちを、小作農の一員として、なかまとともに小作組合に参加して進もうと決意するのです。
出自から逃れることのむずかしさということは、どうしてもあるのでしょう。自作から小作への変化に直面しても、そこは捨てづらい。その変化を作者は書こうとしたのでしょう。