本流

『戦後史のなかの国鉄労使』(升田嘉夫、明石書店、2011年)です。
著者は当局側のひとなのですが、そういう点から、特定の労組に偏らずに、戦後の国鉄の労働運動史をみようと試みています。ですから、その点では、国労の動きも、動労の動きも、わりあい公平にたどることができるように見えます。
当然それは、国鉄という組織のなかの争いの記述でもあるわけで、本来全国ネットワークとしての鉄道網をどのように認識して、その中で経営形態がどうあるべきだったかという議論にはなりません。そこまで著者に期待するのは酷とは思いますが。
たとえば、鉄建公団によって建設された路線を、国鉄が引き取り、その中には経営を圧迫するばかりの路線もあったことを、どう見るかということをとっても、1970年代の国鉄がおかれたややこしさがあるわけですが、そうしたところには踏みこめないのです。
それは、この本の描いた世界の上に構築されるべきなのでしょう。