わかりやすさ

村上龍さんが以前『新潮』に書いた「キャンピングカー」という作品がありました。定年退職後は妻とキャンピングカーに乗って全国を旅したいと考えていた主人公が、妻から拒否され、再就職を試みるも、営業一筋で生きてきた主人公を営業職として受け入れる会社などどこにもないという状況を描いた作品でした。
今回、その作品をオムニバス形式の一章としてとりこんだ、「五十五歳からのハローライフ」という作品が『神奈川新聞』で完結しました。ほかの地方紙に載っているのかどうかわからないので、きわめてマイナーな話題になってしまうかもしれませんが、熟年離婚やペットロス、中学時代の友人がホームレスになるなど、現代の中高年をさまざまな側面から描いています。新聞連載だと、文芸誌に書くものとは、ずいぶんと違った作風のようにもみえるところが、村上さんの技なのでしょう。