別の道

若桑みどり『クアトロ・ラガッツィ』(集英社文庫、全2冊、2008年、親本は2003年)です。
何せ、文庫本で2冊合計1000ページを超える大作ですから、読みごたえはあります。
タイトルは「4人の少年」ということで、16世紀末に、日本からローマに派遣されたいわゆる「天正少年使節」の行動を追いながら、それに至るまでの日本へのキリスト教の入り方と、それへの人々の対応、その後の動きまで叙述しています。
4人のうち、一人は棄教、ひとりはマカオに亡命、ひとりは弾圧が始まる前に病死、さいごに残った中浦が、日本国内で殉教したということも、教えられたことがあったかどうか。
戦乱の世の中、宗教がひとびとの心をとらえたことはあってしかるべきだったことでしょう。たとえ、徳川体制が、キリスト教の弾圧という血塗られたものであっても、ひとびとは平和の体制を受け入れたほど、戦乱への忌避感は強かったのだとおもいます。前にも触れましたが、「おあむ物語」や「おきく物語」で、関ヶ原や大坂落城の悲劇が書き伝えられてきたように。
いくつかの「もし」が重なって、日本のキリスト教隠れキリシタンの世界になってしまったわけですが、そうしなければ、どうなったか。ヨーロッパ諸国と対等になることができたのか、そこはなんともいえませんが、別の日本もあったのかもしれませんね。