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森田悌さんの校訂した、『日本後紀』(講談社学術文庫、全3冊、上・中は2006年)です。
この本は、桓武・平城・嵯峨・淳和の4代のころを扱った史書で、平安京に都を定めた、8世紀末から9世紀初頭の時代を扱っています。坂上田村麻呂アテルイの対決や、薬子の乱などがあった時代です。
しかし、いろいろな事情があったのか、全40巻のうち、10巻分しか現存していないのだそうです。そこで、いろいろな本に引用された記事をあつめて、逸文の部分も年代順に整理したのが、この本なのです。こうやって引用から復元することは、中国の本でもよく行われていますし、日本でも『風土記』で試みられてもいます。それが文庫本でよめるとは、出版社もがんばったものだと思います。原文+現代語訳で、書き下し文を省略したのも、よみやすくする工夫でしょう。こういう本を買う人は、一定漢文を読めるでしょうから、原文がついていればいいのです。その点、学術文庫の『日本書紀』と『続日本紀』は、訳だけなので、あまり役にたたないというのが、実際ですね。こういうのが出るのだから、まだまだ日本の出版も捨てたものではありません。