議論のはて

石川啄木『雲は天才である』(角川文庫、1969年)です。
表題作ほか計4作品を載せているのですが、啄木自身が生活者としてやはり何か欠けている点があるのか、登場人物たちもいろいろと議論をしてはいるのですが、どうしてもそこに血が通っていないようにみえます。小説の書き手としての啄木は、作品を熟したものにするには時間が足りなかったのでしょう。
それにしても、当時のバイロン熱のようなものとはいったい何だったのでしょうか。ギリシアの独立にはせ参じたことが評価されるのだとしたら、当時の日本にとっての〈オスマン帝国〉とはいったいどこだったのか、考えてしまいます。