さきがけ

荻野富士夫さんの『北洋漁業と海軍』(校倉書房、2016年)です。
20世紀の北洋漁業と、日露関係のなかで、海軍がどう動いてきたか、民間業者との関係はどうだったのかを追求したものです。
実際には、1920年代までは、現地に根拠地をおいて、そこで加工したのだそうですが、そのあとで工船式漁法が中心的になっていって、ソ連側とのトラブルもおきるようになっていたのだということです。ソ連側は領海12カイリを主張していて、当時の日本の主張の3カイリとのあいだの、いわばグレーゾーン的なところでの漁獲が問題になっていたのだそうです。実際に海軍が出動して警備にあたっていたのは、1930年代が中心だったということで、小説『蟹工船』が発表された後の方が、盛んだったということのようです。『蟹工船』での海軍の役割の告発が、時代を先取りしていたということになるのですね。