残し方

三崎良章さんの『五胡十六国』(東方選書、2002年)です。
中国の4世紀から5世紀にかけて、黄河流域より北に割拠していた勢力について、それぞれの興亡を簡潔に述べた一般向けの本です。こうしたものは、たしかに珍しいわけで、正史では『晋書』に「載記」としてまとめられて、何やら正統性をもたないような集団扱いされている勢力ですが、それを一つの時代設定としてみつめようという意図は伝わってきます。きちんとした王朝として扱われれば、『北斉書』や『周書』、『陳書』のように正史扱いされた本もつくられたのでしょうが、そこまでの力はなかったのでしょうね。前秦など、実態としてもけっこうそうした記録もあったのでしょうけれど、埋もれてしまって、敵役で終わってしまっているわけですから。
ある意味、書いたもの勝ちというところもあるのでしょうね。