来し方

神林規子さんの『竜門の手まり唄』(民主文学館)です。
表題作は、作者を思わせる主人公が、奈良女子大を卒業するころから、県内の学校に就職できるまでのことを描いた作品で、ほかに収録された短編は、学生時代と現代を結ぶものが多く収められています。女子大構内にある戦時中に奉安殿だった建物が、現存するのはなぜかを探った作品は、たしかここでも『民主文学』掲載時に紹介させていただいたと記憶しています。いろいろな形での過去をふりかえっての、現在へのつながりを描くことで、いまがどんな時代なのかを考えようとしているようです。