時代の影

金素雲訳編『朝鮮童謡選』(岩波文庫、初版1933年、改版1972年)です。
編者が1920年代半ば、東京に住んでいた朝鮮人の人から収集したものと、新聞社が集めたものを中心にして、『諺文朝鮮口伝民謡集』というものを出したのだそうですが、そこから選んで日本語に訳したのだそうです。初版がでたのはもちろん日本統治下のことですから、序文にも、日本統治下の朝鮮民族の子どもたちへの語りかけがありますし、内容でも、注のつけかたが、日本人向けになっています。
そのなかに、〈京〉に〈ソウル〉とフリガナをつけて、〈ソウル。京。お膝もと。〉という注をつけています。ソウルのまちを〈ソウル〉と呼べなかった時代だったのですね。