ちょっと意外

岩波文庫創刊90年ということで、『図書』の臨時増刊で、各界の人が選んだ「私の三冊」という特集がされています。
いろいろとなるほどとおもうところもあるのですが、あってもいいのに誰も選ばなかった三点を選んでみましょう。
北越雪譜』(鈴木牧之)
これなど、ロングセラーでもあるだろうに、選んだ方がいらっしゃいません。江戸時代の地方文人のありかたとしても、江戸の有名作家に出版のあっせんをたのむなど、涙ぐましい努力をしています。石川淳の『諸国畸人伝』とあわせて読むとおもしろいです。
太陽のない街』(徳永直)
まあ、プロレタリア文学は人気がない(中野重治を選んだ方がひとり)ですけれど、作者自身による回想がついている、けっこう貴重な版ですので、岩波さんに復刊してもらいたいほどなんですが。
『兵士シュヴェイクの冒険』(ハシェク
20世紀前半のチェコのようすがわかるもので、第一次大戦がもたらしたものを考えることもできるものです。全4冊ですが、一気に読めます。