あえて解かない

村上春樹さんの『騎士団長殺し』(新潮社、2冊)です。
ストーリーを紹介すると嫌がる方もいらっしゃるのでしょうが、最低限のことだけは。
中心的な話題の時は21世紀初頭、ゼロ年代後半です。主人公の画家が、妻との関係がうまくいかなくなったので、家を出て、美大時代の友人の父親が住んでいた、小田原市郊外の家に仮住まいすることになります。その父親は、高名な日本画家なのですが、高齢で施設にはいっていて、家は空き家状態だったのです。
主人公はそこに住み、ときどき市内の絵画教室で子どもたちに絵を教えたりして過ごします。
ところがある日、天井裏に上った彼は、画家が隠しておいた、「騎士団長殺し」という絵を発見します。そこからストーリーが展開していくのです。
この作品で、提示された謎が、すべて作品中で解明されるわけではありません。そういう、謎を提示して、読者をひっぱっていこうという意識を、作者は計算しているように思えます。ですから、最初はテンポよく読んでいても、途中からペースが落ちてしまいます。謎が解かれはしないのだと気がつくと、そこで読みも渋滞にまきこまれたような感じになってしまうのです。そこを我慢できるかどうかが、村上作品への思い入れにかかわってくるのでしょう。