普通の親

大塚英志さんの『二階の住人とその時代』(星海社新書)です。
1980年代はじめ、徳間書店の2階の編集部に出入りしていた人たちが、どのようにして新しい文化を作りだそうとしていたのかを回想した記録です。もとはジブリの雑誌、『熱風』に連載したものをまとめたとか。
大塚さんは私より2学年年上にあたるので、子どものころのマンガやアニメの記憶などは当然異なっているのですが、彼が神戸のほうの大学で講座をもっていたときに、担当する学生がちょうど自分と同世代だったので、どんな親なのかを聞いたのだそうです。すると、学生が〈普通だ〉と考えている親のすがたは、大塚さんにとって、近い存在だったというのです。東京にいて、または出てきて、文化を送りだす側にいられた人はある意味とても〈幸福〉だったのかもしれません。多くの人は、何かを〈封印して〉今を生きているのですね。