娯楽なのに

馬場マコトさんの『従軍歌謡慰問団』(白水社、2012年)です。アジア太平洋戦争のときの、大衆音楽家たちの行動を、デビューにさかのぼって昭和初期から物語風に描いたものです。戦争へと傾斜する時代に、流行歌に託したひとびとの思いが、いざ戦争となったときにどこまでいくかということなのでしょう。藤山一郎インドネシアで、独立軍に武器などを引き渡すところにかかわっていたなど、現場の感覚を重視しようという著者のこころがみえてきます。