練習

笠原十九司さんの『海軍の日中戦争』(平凡社、2015年)です。
日中戦争のときに、海軍の航空隊は重慶をはじめ、中国の各所を空爆し、迎撃した中国軍機と空中戦もおこないました。零式戦闘機も、中国を最初の活動場所にしていたのです。著者は、戦争の過程をふりかえり、海軍が航空兵力の養成のために、中国戦線を最大限利用した、というより、もともとそのつもりで戦争を拡大したのだと位置づけています。戦時だからと予算の制限も少ない状況で装備や弾薬もふんだんに使え、パイロットの技量もあがり、新鋭機も実戦の経験をつめるというのです。その経験が、アジア太平洋戦争での作戦につながったというのです。
宮崎駿の『風立ちぬ』でも、主人公たちが設計する飛行機が、実戦に投入される場面も暗示的に描かれましたし、ドイツ軍がスペイン内戦を航空戦のテストとしたのと同じようなことがあったということになるのでしょう。〈練習台〉にされるほうにしてみれば、理不尽なことではあるのですが。