戦いはこれから

結局、『三侠五義』最後まで読みました。最後は、ラスボスとでもいうべき襄陽王との戦いに英雄たちが集結して最後のたたかいに臨む、というそれこそ少年ジャンプの打ち切り作品的な終わり方をしています。つまり、どこで作品が終わっても、それなりに完結感があるという作り方をしているというわけです。
ある意味では、大衆の要求に応えるやり方ではあるでしょう。作者の手による構想を完結させるまで読者ががまんできないときには、途中でそれなりの盛り上がりをつくって作品を打ち切るというのは、マンガの世界ではよくあることです。この作品は、講談の形式をもとにしていますから、聴き手の人気に敏感だったのでしょう。19世紀末の中国には、そうした大衆の動向をよくつかんだ通俗小説がうまれる素地が育っていたということです。いっぽうでは、『海上花列伝』のように、作者がきちんとした構成を考えたうえで、雑誌連載という形で発表した作品もあるのですから、当時の中国の識字層のもっていた多様性は、認識する必要があるようです。