頭一つ

野呂邦暢『失われた兵士たち』(文春学藝ライブラリー、2015年、親本は1977年)です。
もともとは自衛隊の社内報的な雑誌に連載されたものだというのですが、有名無名の人物の手になる戦争を記録した文章を取り上げ、そこに見える日本軍のありよう、そこから浮かび上がる日本人のすがたを発見していくという長編エッセイです。
東京裁判に関しての著者の怒りは理解できるのですが、そこはもう少し現在では考える余地はあるかもしれません。ただ、戦場でよく戦える部隊は、やはり指揮官の人間性がすぐれているというところを、各地の戦記から読み取っていくところに、作家としての著者の目が光っているといえるでしょう。もちろんそれは、逆のことも多かったわけで、シベリア抑留時には、相手方にこびへつらうような態度を取り、帰国するとすぐに元に戻るような人もたくさんいたわけです。