百聞は

岩波文庫の『ビゴー日本素描集』(正・続)『ワーグマン日本素描集』です。(ビゴー正は1986年、続は1992年、ワーグマンは1987年、いずれも清水勲編)
幕末から明治にかけて、当時の世相や生活を絵の形にして残してくれたものです。ワーグマンは江戸の東禅寺襲撃事件の現場にいあわせ、縁の下にかくれて状況をスケッチしていたのだそうです。
かれらのおかげでわかることも多いのでしょう。文章家は得てして、珍しいものはわだいにしますが、日常茶飯のことだとかえって省いてしまうものです。そういうことを考えると、いろいろな日常を記録することは大事なのでしょう。

ところで、ビゴーの有名な絵に、魚釣りをしているふたりを、西洋人が眺めているというものがあります。これが、「魚釣り」であって、「二人の男性が一人の女性をとりあう」というシチュエーションでないということは、考えた方がいいのかもしれません。ビゴーもやはり、時代の中に生きているということでしょうか。